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ロケットナウはなぜ10ヶ月連続1位になれたか — 後発フードデリ「送料無料」の注文UXと収益設計を解剖

テクラル研究所 編集部

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ロケットナウはなぜ10ヶ月連続1位になれたか — 後発フードデリ「送料無料」の注文UXと収益設計を解剖

韓国 Coupang 傘下のロケットナウが、2025 年 7 月から 2026 年 4 月まで国内フードデリバリー部門で 10 ヶ月連続 1 位を獲れた理由は「送料・サービス料 0 円」という一点に集約される。ただし本質は値引きではなく、消費者が無意識に引き算していた「手数料」という摩擦を、後発がカテゴリごと消し去ったという設計判断にある。本稿では累計 600 万ダウンロード(2026 年 6 月時点)を生んだロケットナウの注文 UX と収益設計を分解し、「後発参入」を検討する事業者の視点で、再現可能な原理を抽出する。

ロケットナウとは何者か — Coupang が日本に再上陸した「ゼロ配」プレイヤー

ロケットナウは、韓国の EC 大手 Coupang の日本子会社 CP One Japan 合同会社が 2025 年 1 月 14 日に東京・港区で開始したフードデリバリーアプリである。Coupang は 2021〜2023 年にクイックコマースで日本に参入したが採算が合わず一度撤退しており、ロケットナウは収益構造を組み替えたうえでの再上陸にあたる。

開始から約 1 年半でエリアは東京・神奈川・大阪・愛知・福岡・北海道など 12 都道府県に拡大した。加盟店は 1 万店を超え、App Store で 4.6、Google Play で 4.8 と高い評価を得ている。Sensor Tower の APAC Awards 2025 では「2025 年に世界で最も多くダウンロードされた新規ローンチの飲食店アプリ」に選定された。後発でありながら、この期間の市場の成長分の約 3 割を奪ったとされる。

ロケットナウの主要画面(人気チェーン発見・送料サービス料0円の会計・リアルタイム配達トラッキング)

後発の急成長は「まったく新しい体験」からではなく、「既存カテゴリの当たり前を一点だけ否定する」ことから始まっている。

なぜ刺さったのか — 「0 円」は割引ではなく心理的摩擦の除去だった

ロケットナウが効いたのは、金額の大小ではなく注文時に発生する複数の心理的ハードルをまとめて消した点にある。既存サービスは商品代に配達手数料・サービス料・(時に)割高な商品価格を上乗せし、ユーザーは無意識に「結局いくら乗るのか」を引き算しながら注文していた。ロケットナウは送料 0 円・サービス料 0 円に加え「お店と同価格」をうたい、この引き算そのものを不要にした。

ロケットナウの店舗発見フィード(お店と同価格・加盟店1万店以上)

この差別化が本物だった何よりの証拠に、最大手の Uber Eats も 2026 年 3 月に「お店と同価格」を打ち出して追随した。出前館は赤字、Wolt は撤退と、価格を軸にした消耗戦が一気に進んでいる。

カテゴリ内で全員が「当然のコスト」として受け入れている摩擦を見つけ、それを完全にゼロにできれば、それ自体が獲得装置になる。

消費者が 0 円なら、誰がどこで払うのか — 収益構造を分解する

消費者から取らないなら、原資はどこかにある。ロケットナウの収益は大きく 3 つだ。第 1 に加盟店からの手数料(報道・解説サイトの記載では約 35%、ただし加盟から最初の 3 ヶ月は 0%)。第 2 に 2026 年 4 月に始めた店舗向け広告で、アプリ内の掲載枠をクリック課金型で販売する。第 3 に、黒字化を急がず親会社 Coupang の資本で先行投資を吸収する構造である。配達網は自社で抱えず、ギグ(業務委託)の配達員に外注している。

ロケットナウの収益構造(消費者0円・加盟店手数料約35%・店舗向け広告・親会社の資本で先行投資)

手数料率だけ見れば Uber Eats と大きく変わらない。違いは「ユーザー側のコストを画面に見せない」設計にある。

項目 ロケットナウ Uber Eats 出前館
消費者の送料 0 円 あり(店舗・距離で変動) あり
消費者のサービス料 0 円 あり あり
商品価格 「お店と同価格」をうたう 店頭より割高な場合あり 店舗により異なる
加盟店手数料(目安) 約 35%(最初の 3 ヶ月 0%) 約 35% 約 30〜40%
配達体制 ギグ(業務委託) ギグ+一部自社 ギグ+一部自社

※手数料率は各社の公表値や報道・解説サイトに基づく目安(2026 年 6 月時点)。実際の料率は契約条件で変動する。

「無料」とは原価がゼロという意味ではなく、コストの負担者と回収のタイミングを後ろにずらす設計判断である。どこで・いつ回収するのかを描けないなら、無料は単なる出血にしかならない。

注文 UX の設計 — 「摩擦ゼロ」を細部の体験に落とし込む

ロケットナウの UX は、価格の思想を画面の細部まで一貫させている点が巧い。起動直後は位置情報を先に取り、配達可能エリアかどうかを住所で判定する。初回クーポン(最大 4,000〜5,000 円分)はコード入力なしで会計時に自動適用され、「割引を探す」手間も消している。ホームはフィード型で近隣の人気チェーンや売れ筋を提示し、店舗カードには「お店と同価格」バッジを添える。

決定的なのは会計画面だ。多くの既存サービスが送料・サービス料を行項目として並べるのに対し、ロケットナウはそれらを項目として出さない。ユーザーの頭の中で起きる「足し算」を画面から消している。注文後はリアルタイムの配達トラッキング(注文受諾→調理中→配達中→配達完了)と地図、ドライバーへのメッセージで体験を閉じる。

価格戦略は会計画面の情報設計まで降りて、はじめて体験になる。「安い」と言うことと「高く感じさせない」ことは、別の仕事である。

後発参入の意思決定 — ロケットナウから抽出できる 4 つのレバー

ロケットナウの動きを「フードデリの話」で終わらせず、後発がカテゴリに挑むときの一般原理として読むと、4 つのレバーが見えてくる。

後発フードデリバリー参入の4つのレバー(地域集中・摩擦ゼロ・ギグ外注・広告収益化)

  1. 地域を絞って面で支配する — 全国に薄く広げず、港区から 12 都道府県へと面で濃く取り、配達効率と加盟店密度を確保した。
  2. カテゴリの摩擦をゼロにする — 全員が当然と思っているコスト(手数料)を一点だけ完全に消す。
  3. 自社配達せずギグに外注する — 物流資産を持たず資本の消耗を抑える(自社配達に踏み込んだ Wolt の重さと対照的だ)。
  4. 広告を後から収益柱に育てる — まず利用者と加盟店を獲り、密度がついた段階(600 万ダウンロードの 3 ヶ月後)で広告事業を立ち上げる。

一方で再現を狙うなら、リスクも同じだけ見ておく必要がある。第 1 に、このモデルは親会社の資本が赤字を吸収し続ける前提であり、Coupang が一度日本を撤退した過去が示すとおり、支援には冷徹な「撤退ライン」がある。第 2 に、累計ダウンロードは話題性の指標であって継続利用ではない。月間の実利用や再注文率こそが本当の体力で、補助金が薄まったときに残るかが問われる。第 3 に、配達品質やドライバー教育のばらつきは、差別化の効きにくいカテゴリほど一度の悪い体験が口コミで効く。

後発の勝ち筋は「資本 × 地域集中 × 摩擦ゼロ × 後追いの収益化」の連立であり、どれか 1 つでも欠けると無料は続かない。検討すべきは「真似できるか」ではなく、「自社の資本余力と回収シナリオで、この連立を何ヶ月維持できるか」である。

テクラル研究所が支援できること

ロケットナウの事例は、後発参入の成否が派手な新機能ではなく、「カテゴリの摩擦の発見」「収益を回収するタイミングの設計」「体験の細部への落とし込み」という地味な設計判断の積み重ねで決まることを示しています。私たちテクラルは、こうした新規プロダクトの体験設計(UX)・MVP 開発・収益設計の検証を、ワンストップでご支援しています。

新規事業の構想段階、既存プロダクトの UX 改善、収益設計の見直しのいずれに取り組む事業責任者・PdM・経営者・新規事業担当者の方も、どの段階からでもテクラル合同会社までお気軽にご相談ください。後発でカテゴリに挑むための「どの摩擦を、どこで回収しながらゼロにするか」を、一緒に設計します。

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テクラル合同会社が運営する「テクラル研究所」の編集部。Web・アプリ・SaaS プロダクトの市場リサーチ、UI/UX 分析、収益化設計を専門領域に、開発会社ならではの「作る側の解像度」で記事と一次リサーチ資料(ホワイトペーパー)を発信しています。MVP 開発、SaaS 構築、AI 機能組み込みの現場知見を活かし、フレームワークと数値で語ることを編集方針としています。

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