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勤怠管理SaaS 構造分析 — KING OF TIME / ジョブカン勤怠 / ラクロー はどこで設計が分岐したか

テクラル研究所 編集部

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勤怠管理SaaS 構造分析 — KING OF TIME / ジョブカン勤怠 / ラクロー はどこで設計が分岐したか

勤怠管理システムは長らく「いかに正確に打刻させるか」を競ってきた。ICカード、指紋・顔認証、GPS——打刻方式の豊富さがそのまま製品の強みだった。ところがラクローは「打刻させない(自動で推定する)」という逆の設計で参入している。KING OF TIME・ジョブカン勤怠・ラクローの3社を分けているのは機能の多寡ではなく、「打刻という行為そのものをどう捉えるか」という思想であり、それが対象顧客と課金の考え方まで規定している。

本稿は、勤怠管理システムを比較・導入しようとしている、あるいは自社で労務・勤怠まわりのプロダクトを設計しようとしている事業責任者・PdM・経営者・新規事業担当者に向けて、3社を「①ポジショニング ②打刻方式 ③集計と連携 ④課金境界」の4軸で解剖する。

打刻させる設計と、打刻させない設計

最初に押さえるべき結論は、勤怠管理には「正確に打刻させる」発想と「打刻をなくす」発想の2系統があるということだ。

多様な打刻方式 PC・スマホ打刻 ICカード・生体認証 GPS・位置打刻

KING OF TIMEとジョブカン勤怠は前者の系統だ。PC・スマホ、ICカード、指紋・顔認証、GPSなど多様な打刻方式を用意し、現場の働き方に合わせて「正確に時刻を記録する」ことに価値を置く。働き方改革で求められる労働時間の客観的記録にも、打刻の精度で応える発想である。

ラクローは後者だ。PCのログイン・ログ、カレンダー、位置情報などから労働時間を自動で推定し、従業員はその内容を確認・承認するだけにする。打刻ボタンを押す習慣そのものをなくし、打刻漏れや打刻のための手間を消すことを狙う。

示唆: 勤怠プロダクトを設計するなら、まず「打刻の精度を上げる」のか「打刻の手間をなくす」のか、目指す方向を決める。前者は多様な打刻手段とデバイス対応に投資が要り、後者はログや外部データから労働時間を推定するロジックに投資が要る。両者は必要な開発もコスト構造もまったく違う。

軸1: ポジショニング — 3社はどこで戦うか

打刻思想の違いを踏まえると、3社の立ち位置が整理できる。

製品 ポジショニング 強み 主な対象
KING OF TIME 多機能・国内最大手クラス 打刻方式の豊富さと機能網羅 中小〜大企業まで幅広く
ジョブカン勤怠 シリーズ連携・低価格 給与・労務・経費との連携、安さ コスト重視の中小
ラクロー 打刻レス・自動推定 打刻の手間ゼロ、管理工数の削減 打刻運用に疲れた企業・知識労働中心の組織

KING OF TIMEは、打刻方式と機能の網羅性で国内最大手クラスの地位を築いている。多様な業種・働き方に1つで対応できる間口の広さが武器だ。

ジョブカン勤怠は、勤怠・給与・労務・経費などジョブカンシリーズの一部として提供され、シリーズ間の連携と低価格を強みにする。コストを抑えて勤怠から労務まで揃えたい中小に向く。

ラクローは、打刻レスという一点で差別化する新興だ。打刻運用そのものに疲れた企業や、PCを中心に働く知識労働者の多い組織に刺さる。機能の幅で勝負せず、「打刻をなくす」という体験の違いで陣地を取っている。

示唆: 既存の巨大プレイヤーが機能の網羅で戦う市場でも、「当たり前とされている行為(ここでは打刻)をなくす」という角度で陣地は取れる。自社が参入を考える領域でも、機能を足して勝つのか、前提となる作業を消して勝つのかは、別の戦い方として検討する価値がある。

軸2: 集計と連携 — 打刻の後ろにある本当の仕事

勤怠管理の手間は打刻だけではない。打刻データを集計し、残業を計算し、給与・労務へ受け渡すまでが一連の仕事だ。

勤怠データの流れ 打刻 集計・残業計算 給与・労務連携

データは「打刻 → 集計・残業計算 → 給与・労務連携」と流れる。法定労働時間や残業の上限、各種手当の計算といった労務ルールは複雑で、ここを自動化できるかが現場の負担を大きく左右する。

KING OF TIMEは集計・残業計算の細やかさと、給与ソフトへの連携の広さで応える。ジョブカン勤怠はシリーズ内の給与・労務とシームレスにつながる点が強い。ラクローは推定した労働時間をそのまま集計・承認に流す設計で、打刻と集計の境目自体を薄くしている。

示唆: 勤怠プロダクトの価値は打刻UIではなく、その後の集計・残業計算・給与連携という「複雑なルールの自動化」に宿る。自社で労務系プロダクトを作るなら、入力体験より先に、法令と各社の就業規則に耐える計算ロジックと連携先を設計するべきだ。ここが弱いと、打刻だけきれいでも現場で使われない。

軸3: 課金境界 — 1人あたりで積み上がる

勤怠管理SaaSの課金は、従業員1人あたりの月額(席課金)が基本だ。利用人数が増えるほど料金が上がる。

製品 課金境界 料金の目安
KING OF TIME 利用人数(1人あたり月額) 1ユーザー月額330円が代表的
ジョブカン勤怠 利用人数(1人あたり月額) 1ユーザー月額220円〜(機能の組み合わせで変動)
ラクロー 利用人数(1人あたり月額) 1人あたり月額制。打刻レスによる管理工数削減を価値として訴求

3社とも1人あたり月額の席課金で、従業員数に比例して料金が積み上がる。ジョブカン勤怠は低単価で入口を軽くし、KING OF TIMEは機能の網羅性に見合った標準的な単価を取る。ラクローは単価そのものより、打刻と確認・集計にかかっていた管理工数の削減を価値として打ち出す。

示唆: 席課金は従業員数に連動するため、人数の多い企業ほど料金が大きくなる。導入を検討する側は「1人あたり単価 × 人数」だけでなく、打刻・集計・確認にかかる人件費まで含めて比較すべきだ。プロダクトを売る側も、単価競争に乗るのか、削減できる工数で価値を語るのかで打ち出しが変わる。

3社の構造を1枚で読む

4軸を1枚にまとめる。

KING OF TIME ジョブカン勤怠 ラクロー
打刻思想 多様な打刻で正確に記録 多様な打刻で正確に記録 打刻レス・自動推定
ポジショニング 多機能・最大手クラス シリーズ連携・低価格 打刻レスで差別化
集計・連携 細やかな集計と広い連携 シリーズ内で完結 推定から承認まで一体
課金境界 1人あたり月額 1人あたり月額(安価) 1人あたり月額(工数削減で訴求)

3社は同じ勤怠管理でも、打刻という行為への態度が違う。KING OF TIMEとジョブカンは「正確に打刻させる」道を磨き、ラクローは「打刻をなくす」道を選んだ。どれが優れているかではなく、自社の働き方が打刻になじむのか、打刻が負担になっているのかで選ぶべき製品が変わる。

テクラル研究所からの提案

勤怠管理の選定や、労務まわりのプロダクト設計でつまずくのは、「打刻のしやすさ」だけで判断してしまうことに原因がある。本稿で見たとおり、価値の中心は打刻の後ろにある集計・残業計算・給与連携という複雑なルールの自動化であり、ラクローのように打刻そのものをなくす設計も成立する。打刻させるのかなくすのか、その後の計算と連携をどこまで自動化するか——この順で考えれば、選ぶべき製品も、内製する場合の設計も定まる。

自社で勤怠・労務系のプロダクトを構想している方、既存の勤怠体験を改善したい方、複雑な労務ルールの自動化に取り組みたい方は、まず「自社の働き方に打刻という行為が本当に必要か」を一緒に見直すところから始めるのが近道だと考えています。

テクラル合同会社では、プロダクト設計・UI/UX・MVP開発・収益化設計の伴走を提供しています。新規事業の構想段階・既存プロダクトのUX改善・業務ロジックの自動化に取り組む事業責任者・PdM・経営者・新規事業担当者の方は、いずれの段階でもテクラル合同会社までお気軽にご相談ください。設計の壁打ち相手としてのご相談も承ります。

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テクラル合同会社が運営する「テクラル研究所」の編集部。Web・アプリ・SaaS プロダクトの市場リサーチ、UI/UX 分析、収益化設計を専門領域に、開発会社ならではの「作る側の解像度」で記事と一次リサーチ資料(ホワイトペーパー)を発信しています。MVP 開発、SaaS 構築、AI 機能組み込みの現場知見を活かし、フレームワークと数値で語ることを編集方針としています。

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